昨年の12月、東京の酒文化研究所から
発行されている「酒文化」と言う月刊誌の
特集に載せる原稿を依頼された。
テーマが「一杯の思い出」
仕事柄、お酒にまつわる話のネタには
事欠かない。しかし色々とある中で
どうしても書き記して置きたい事があった。
それは2年前に、仕事の関係で一人暮らし
を始めた長男を訪ねた時の事だった。
原稿が出来上がり、担当者の方にメールした
後、長男にもその文章をメールしておいた。
--------------------
「父子酒」
私はその日、三浦半島の先端の町の老人
ホームで介護の仕事をしている長男の所を
訪ねていた。2月というのにもう菜の花
が咲き始めていた。私は仕事を終えた息子
を港の近くの、表通りから少し入った小料
理屋に誘った。店に入り小上がりに座る。
客はまだ私たちだけであった。
早速ビールと料理を注文する。
私は運ばれて来たビールを息子のグラス
に少し泡を立てるようにして注いだ。
すると今度は息子が私のグラスにビールを注い
でくれる。乾杯。 乾いた喉をビールの苦味
と炭酸の刺激が直撃する。
旨い。息子も満面の笑みを浮かべ旨いと
言う。新鮮な地場の魚を使った料理が
次々とテーブルに並んでゆく。注文していた
日本酒も届く。 再び乾杯。すっきりとした
辛口の酒が喉を通り越して、胃の中へ滑り
込んでいく。
息子は仕事の事、そしてこちらでの生活
の事を話し始める。
どうやらこちらでの一人暮らしが息子を、
少しは成長させてくれたようだ。
私は13歳の時に父を亡くしているので
こうして二人で酒を酌み交わす事は出来
なかった。
でも今夜はきっと父も、天国からやって来
て、私たちと一緒に酒を酌み交わして
くれているような気がした。
もう一度乾杯をした。
---------------------
すると程なく返信があった。
良いですね~☆なかなか素敵な文章に仕上
がっておりますな!
ここで一句→
「向かい合ひ 照れも肴に 父子(おやこ)酒」
私には俳句を詠む趣味はない。
今日、その長男から50才の誕生日を迎え
た私にメールが届いた。
父へ
お誕生日おめでとうございます!!
仕事に忙しい日々だと思いますが、自分の体
を過信しないように、十分ご自愛下さいまして、
これからもますます、充実のした仕事が成せる
ようお祈り申し上げます。
「齢経し(よわいへし)父の背中に老いはなし
ただ追いかけし 酒浪漫かな」
…この歌をいつまでも大きな父の背中に捧ぐ。
短歌を詠む才能もない。
はて?誰のDNAか??
明日は次男が、アルバイトで稼いだお金で
家族全員を食事に連れて行ってくれると言う。
いつの間にか知らぬ間に成長している子供達。
親父もうかうかしていられない。
いつまでも若く(と思われる)、
大きい背中(と言ってもらえるように)
を維持して行かねばならなくなった。
発行されている「酒文化」と言う月刊誌の
特集に載せる原稿を依頼された。
テーマが「一杯の思い出」
仕事柄、お酒にまつわる話のネタには
事欠かない。しかし色々とある中で
どうしても書き記して置きたい事があった。
それは2年前に、仕事の関係で一人暮らし
を始めた長男を訪ねた時の事だった。
原稿が出来上がり、担当者の方にメールした
後、長男にもその文章をメールしておいた。

「父子酒」
私はその日、三浦半島の先端の町の老人
ホームで介護の仕事をしている長男の所を
訪ねていた。2月というのにもう菜の花
が咲き始めていた。私は仕事を終えた息子
を港の近くの、表通りから少し入った小料
理屋に誘った。店に入り小上がりに座る。
客はまだ私たちだけであった。
早速ビールと料理を注文する。
私は運ばれて来たビールを息子のグラス
に少し泡を立てるようにして注いだ。
すると今度は息子が私のグラスにビールを注い
でくれる。乾杯。 乾いた喉をビールの苦味
と炭酸の刺激が直撃する。
旨い。息子も満面の笑みを浮かべ旨いと
言う。新鮮な地場の魚を使った料理が
次々とテーブルに並んでゆく。注文していた
日本酒も届く。 再び乾杯。すっきりとした
辛口の酒が喉を通り越して、胃の中へ滑り
込んでいく。
息子は仕事の事、そしてこちらでの生活
の事を話し始める。
どうやらこちらでの一人暮らしが息子を、
少しは成長させてくれたようだ。
私は13歳の時に父を亡くしているので
こうして二人で酒を酌み交わす事は出来
なかった。
でも今夜はきっと父も、天国からやって来
て、私たちと一緒に酒を酌み交わして
くれているような気がした。
もう一度乾杯をした。
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すると程なく返信があった。
良いですね~☆なかなか素敵な文章に仕上
がっておりますな!
ここで一句→
「向かい合ひ 照れも肴に 父子(おやこ)酒」
私には俳句を詠む趣味はない。
今日、その長男から50才の誕生日を迎え
た私にメールが届いた。
父へ
お誕生日おめでとうございます!!
仕事に忙しい日々だと思いますが、自分の体
を過信しないように、十分ご自愛下さいまして、
これからもますます、充実のした仕事が成せる
ようお祈り申し上げます。
「齢経し(よわいへし)父の背中に老いはなし
ただ追いかけし 酒浪漫かな」
…この歌をいつまでも大きな父の背中に捧ぐ。
短歌を詠む才能もない。
はて?誰のDNAか??
明日は次男が、アルバイトで稼いだお金で
家族全員を食事に連れて行ってくれると言う。
いつの間にか知らぬ間に成長している子供達。
親父もうかうかしていられない。
いつまでも若く(と思われる)、
大きい背中(と言ってもらえるように)
を維持して行かねばならなくなった。
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